「モノをつくれば売れる」というのは過去の話。
今は「売れるモノを効率よくつくる」ことが求められています。
そのためにデジタル技術が必要ですが、製造業のデジタル化は遅れているとよく言われています。
なぜ、日本の製造業はデジタル化が遅れていると思いますか?
今回は、製造業のデジタル化が遅れている理由ついて解説していきます。
製造業のデジタル化が遅れている理由とは?
一言でいうと、日本の現場力が強すぎたからです。
日本の製造業は高度経済成長期に大きく発展しました。
モノをつくれば売れる、そんな時代です。
当時は、とにかく絶えずモノをつくり続けました。
モノをつくる機会が多くあったおかげで、技能レベルがあがり次第に現場力が強くなっていきました。
しかし、現場力が強くなったために問題がおきました。
現場の主張も強くなりすぎてしまった。
これがまさに日本の製造業のデジタル化が遅れている原因の1つです。
上層部はデジタル化を進めたい
よくある話で、会社の上層部はデジタル化を進めたいと強く思っています。
デジタル化が進めば、なんとなく会社の経営はよくなるだろうと期待しているためです。
ただし、具体的なことは言いません。
「デジタル化を進めよ」とだけ指示します。
部長・課長は上層部の期待に応えたい
デジタル化の推進を指示された部長や課長は、伝言ゲームのように部下に「デジタル化を進めるように」と指示します。
ここでもまた、具体的な指示は出しません。
「デジタル化」といった抽象的な言葉で済ませます。
「部長・課長は上層部の期待に応えたい」と思っている人が多く、自分の頭で具体的にどうするかを考える人は少数派です。
ほとんどの場合、デジタル化の具体的なところは部下が考えることになります。
(組織ってこんな感じです。部下は全部丸投げじゃん…と思うかもですがここは我慢)
部下は具体的なデジタル化を考える
実務者としてデジタル化を指示された部下(以下、デジタル人材)は、具体的な施策について考えていきます。
「製造現場で働く作業者が抱える問題をデジタル技術を使って解決しよう!」
最初はみんな、志は高いです。
しかし、いざツールやシステムを開発/導入し現場作業者に使ってもらおうとすると、思ってもみない回答があることがあります。
- それを使うことで作業が1つ増えるんだけど…。
- できるならやめてほしい。
- 持ってくるならもっとマシなの持ってきて。
ネガティブな感情ですよね。
しかし、これが正論です。
作業者はデジタル化を求めていない
作業者からすれば、これまで通りのやり方でモノはつくれますし、慣れているやり方の方が早く・楽に作れると自信を持っています。
- デジタル化で現場の作業を増やしてどうすんの?
- 余計に工数がかかるだろ。
- その工数はどこで回収するんだ?君が負担してくれるのか?
厳しいコメントですが、実際こうした意見もあります。
まさに正論。反論のしようがありません。
たしかにデジタル化で余計に作業が増えるなら、本末転倒ですよね。
デジタル化のキーマンは作業者?
極端な話、現場作業者は「別にデジタル化をしなくてもモノがつくれたらいいんでしょ?」と思っています。
製造業のデジタル化が遅れているのは、エンドユーザである作業者がこうした意見を持っているからです。
決して悪い意味ではありません。デジタル化を進める上でのキーマンは「作業者」と言ってもいいかもしれません。
デジタル人材がいくらツールやシステムを持ってきても、作業者が使わなかったら意味ないですからね。成果ゼロ。
せっかく開発/導入したツールやシステムが使い物になるためには、運用されるためには、デジタル人材が最初に
- 現場作業者からのニーズをしっかりと聞いておくこと
- 現場作業者のニーズにマッチしたものに仕上げること
こういったことが重要です。
デジタル人材は上司と作業者の両方の期待に応えることになり大変ですが、それがデジタル人材のミッションです。
製造業のデジタル化が遅れるのはデジタル人材が足りないから?
デジタル人材が足りないというのは言い訳です。
デジタル化を進める上でよく人手が足りないと言われますが、本当にそうでしょうか?
足りないのはスキルじゃないですか?
スキルといってもプログラミングではない
デジタル人材が必ずしもプログラミングできる必要はないです。
デジタル人材に求められるのは、要件定義ができるスキルです。
- ユーザが何をしてほしいのかを明確にし、
- その実現方法や手段を検討し、
- 最終的に何ができたらゴールかを決めること。
こういったことがデジタル人材に求められています。
要件定義ができないと…
要件定義できない、もしくは苦手な人がデジタル化を推進しても、それではなかなか成果がでないかもです。
というのも、要件定義がしっかりしていないと、いくらツールやシステムを開発/導入しても、エンドユーザが求めるものと違うものができてしまうからです。
結局、使えないものにならないものをただ開発しただけ、導入しただけ。これでは成果の刈り取りはできません。
こういった活動を続けていても無意味ですよね。
これではデジタル化は進みません。
野球で例えるなら、空振り三振です。
デジタル人材はニーズを的確につかめ!
せっかくお金や時間をかけてツールやシステムを開発/導入しても、エンドユーザである作業者が使わないなら、結果的に無駄に終わってしまいます。
こうした費用や労力を無駄にしないためには、しっかりと現場作業者のニーズにあった施策であるべき。
デジタル人材はニーズを的確につかみ、しっかりとそのニーズに応えていくことが大切です。
そのために「要件定義」ができるスキルが必要です。
まとめ
今回は、製造業のデジタル化が遅れている理由を解説しました。
日本の製造業は高度経済成長期に大きく発展し、「モノをつくれば売れる」こういった経験があるために、20年以上経った今でも同じ価値観でいます。
現場の意見が強く、ときには反発もありますが、今や「モノをつくれば売れる」そんな時代ではありません。
「売れるモノを効率的につくる」
そのためにデジタル技術が必要です。
製造現場のデジタル化に従事している人は、上司と作業者の両方の期待に応えることになり大変ですが、あきらめずチェンジ&チャレンジです。